日大アメフト部の悪質タックル、宮川さんや監督コーチのその後と現在

2018年に日本を揺るがした日本大学アメフト部による悪質なタックル問題。
連日、ネットニュースやワイドショーを賑わせた事件から数年経ちました。

今回は、その加害者である宮川選手や内田監督が現在どうしているのか、調査しましたのでご覧ください。

日大アメフト部の反則タックル問題とは

2018年5月6日に行われた日本大学関西学院大学の定期戦で、日大のDL(ディフェンスライン)のポジションを守っていた宮川泰介選手が、関学大のQB(クオーターバック)の選手に対して、突然背後から強烈なタックルをしてけがを負わせた事件です。

普通に大怪我を負うか、最悪の場合は生命の危険まで有り得る悪質な行為でしたが、そこまでの大きな怪我はなくとも足の痺れなどがあり精密検査を受けるほど負傷しました。

これがメディアで取り上げられて、日本全土を揺るがすほどの大きなニュースに。

その後、宮川泰介選手は内田正人監督、井上奨コーチの2人の指示だったことを公表。

記者会見まで行い、とてもその指示に逆らえないパワハラがあったことまで判明してしまったのです。

日大アメフト部の日本大学フェニックスと関学大アメフト部の関西学院大学ファイターズは、大学アメフトの中でトップ争いを長年続けている関係で、この試合も伝統の一戦だったそうです。

しかし、事件の起こったこの1試合だけで、日本大学フェニックスはこの事件となる反則タックルまでに2回も故意の反則を行っていたことも悪質であったことも、話題性に拍車をかけていました。

その全てのパーソナルファウルは、監督とコーチの指示によるものだったことが記者会見で判明し、その信じられない実態が連日報道されていました。

*左が井上奨コーチ、右が内田正人監督(いずれも当時)

そのマイクの多さからも世間の注目度の高い事件だったことは間違いないです。

結局、加害者となった宮川選手は、パワハラとも受け取れるような強制力の強い指示で、殺人タックルをかましてしまったということが公表し、当時の監督とコーチがメディアの注目を浴びることとなってしまいました。

彼らの処分も厳しいものとなりました。

日大アメフト部の加害者となった選手、監督、コーチの処分

【加害者・宮川泰介選手の処分】

記者会見を開き、一気に名前が全国区になってしまった宮川選手。
しかし、彼が殺意があると言っても過言ではないほどのタックルをしてしまったのは紛れもない事実です。

記者会見では、一貫して監督やコーチの指示だったことを釈明。

同情が集まり、被害者である関学大の選手もその父親も、宮川選手への厳しい処分はしないよう求めました。

しかし、東京地検立川支部に傷害容疑で告訴されます。

被害者である関学大の選手と示談が成立していることなどから、不起訴処分

それでもしばらくアメフトの公式戦には出場することがなく、2019年11月に公式戦に久々に出場し、こちらもニュースになりました。

【監督・コーチの処分】

試合の約2週間後である2018年5月19日に内田正人前監督は辞任を表明

その4日後には井上奨前コーチの辞任と、内田正人前監督の日大常務理事職の職務停止と謹慎を表明。

さらに内田正人前監督は、色んな日大での役職の辞任、謹慎処分、異動など非常に厳しい処分が発表されました。

また、事件の2か月後にはOBでコーチを務めていた井ノ口忠雄常務理事が、悪質タックルの指示について多くの選手に口止めをしていたことが判明したとして、理事を辞任しています。

まだまだ続きます。

内田正人前監督と井上奨前コーチの懲戒解雇が7月30日に決定すると、日本大学の田中英壽理事長が兼任している相撲部部長・総監督の職を解任。

この日大の理事長は、暴力団関係者とも繋がりがあると週刊誌に報道されている人物です。

他にも、学長の大塚吉兵衛を含む理事や常務理事など10名弱のスポーツ部部長職の解任を発表しました。

あのタックルひとつで、合計13名の処分に繋がったことになります。

また、日大は他の関東学生アメフト連盟の参加大学から対戦を拒否され、2018年度シーズンは公式戦の出場資格を停止という重い処分がくだりました。

当然、翌2019年度のシーズンは降格が決定して下位リーグでの試合参加をすることとなりました。

日大アメフト部の渦中の人物たちのその後と現在

多くの人に重い処分が下り、世間から後ろ指をさされた大きなニュースでしたが、その後はどうしているのでしょうか。

現在の活躍などを合わせてご覧ください。

監督だった内田正人さんのその後と現在

1955年8月9日生まれ、埼玉県出身の内田正人さん。

日本大学でアメフト部に所属しており、OBでした。
「ショットガン・オフェンスの申し子」とも呼ばれるほどの名選手だったらしく、現役時代からかなり日本アメフト界では有名だったそうです。

1978年、日大を卒業した後に日大アメフト部のコーチになりました。翌年にはコーチをしながら日大の文理学部の職員となります。

2003年には日大フェニックスの監督に就任

事件があったのは2018年ですが、実は2016年に一度、監督を引退しています。
しかし、2017年には監督に復帰。
そしてその翌年2018年に悪質タックル事件が起こっているんですね。

事件の約2週間後となる5月19日に辞任を表明した内田正人前監督。

5月29日には関東学生アメリカンフットボール連盟が事実上の永久追放とも言える処分を下し、アメフト界から姿を消すことになります。

さらに、前項で記述した通り、日本大学での役職についても多くの処分が下ることになってしまいました。

内田正人前監督にはかなりの重い処分が下ったのですが、さらに2018年7月30日には懲戒解雇にする決定が日大の理事会で決定。

アメフトに関することだけでなく、職まで失う決定をされてしまった内田正人さん。

実は、事件の黒幕とも思われていた人物ですが、後に行われた裁判では無実であることが警察によって立証されています。

警察は延べ200人以上の関係者から話を聞いて、内田正人さんが実際にはプレーを見ていないこと、反則を指示した言動はなかったこと、悪質タックルの指示がなかったことを認定

内田正人前監督が支持をして諸悪の根源と思われていたのは、全てメディアが作り出した虚像だったのです。

たしかに宮川泰介選手に対してパワハラともとれる指導があったかもしれません。

そして、教育者としてあんなに大きな事件を起こした責任を、監督として受け入れる必要があったかもしれません。

しかし、悪質タックルの指示はしておらず、完全なでっち上げであることが法的に認められた格好になりました。

日本大学での職務まで失った内田正人さんは、日大を相手取り、2018年11月には解雇を無効とするよう訴訟を起こしました。

その1年後の2019年12月に、東京地方裁判所から和解勧告が日大側に出され、日大は解雇を撤回

監督業の退職は変わりませんが、タックルの指示はなかったことが分かったことで、懲戒解雇はなくなりました。

では、日大の職場に復帰?と思われたのですが、そうではありません。

懲戒解雇を撤回されたので、通常の退職という形で日大を離れています。

いやらしい話ですが、退職であれば退職金が発生するなど、金銭的な通常の処遇を受けることができます。

内田正人さんは大学卒業から40年以上も日大に務めていたので、退職金も数千万円は軽くあったでしょう。

また、世間的にも懲戒解雇は罰であるのに対して退職は自分の意思でのリタイアです。

現在、内田正人さんは65歳も過ぎていますが、おそらく仕事はしないで穏やかに生活していると思われています。

全て悪者にされて、メディアによる一番の被害者となった内田正人さん。

本当の性格は、優しい人だそうです。
確かに少し厳しいところがあるかもしれないけど、監督とはそういうものという学生もいたそうですので、メディアで一切笑顔を見せませんでしたが、今はどこかで笑いながら生活していると良いですね。

コーチだった井上奨さんのその後と現在

大阪府枚方市出身の井上奨(つとむ)さん。

高校は大阪産業大学附属高校と言われています。

大阪産業大学附属高校のアメフト部「ファイティング・エンジェルス」は全国大会出場の常連校。1994年には全国制覇をしており、その後も優勝を何度も重ねています。

高校を卒業すると日大に進学

内田正人前監督もそうですが、井上元コーチも日大のOBということですね。

日大を卒業すると、これまた内田正人前監督と同じくそのまま日大の職員として就職

日大アメフト部のコーチを務めながら、同じ日大系列の日大豊山高校の監督として指導をしていました。

日大豊山高校では、悪質タックルの加害者である宮川泰介選手を指導しており、宮川選手が大学に入る前から教え子でした。

宮川選手は井上奨元コーチを「つとむさん」と下の名前で呼ぶほど信頼していたのですが、大学に入って、より厳しい環境になったため高校時代の関係とは少し違った間柄になったそうです。

そういった厳しい指導になって、悪質タックル事件が起こってしまうのですが、井上奨元コーチは内田正人前監督と共に、メディアから全ての罪を着せられてしまいます。

内田前監督と同じく、起訴されましたが警察の取り調べにより完全に無罪だということが確定。

2018年7月に決定した懲戒解雇の撤回を求めて2020年9月に日大を提訴。

内田監督に続き、懲戒解雇の撤回が認められたのですが、懲戒解雇されてからは別の職業に就いていたそうです。

土木会社での人員を配置する仕事に転職していたと話した井上奨さん。

実際に作業員として働くこともあったそうで、アメフト仲間だった友人が社長を務める会社で頑張っていたそうですね。

記者会見の時には一切見せなかった笑顔が印象的で、現在も加害者となった宮川選手を応援しているものの連絡は取っていないことを明かしています。

この動画では出てきていませんが、現在の井上奨 元コーチは、その会社で働いていません。

今は驚くべきことに日大に復職しているのです。

2018年7月に懲戒解雇が決定し、クロと言われていたものの、警察の捜査によって完全にシロであることが判明し、2020年9月に懲戒解雇の撤回を求めて提訴したものが認められた井上奨さん。

退職せずに日大で務めたいという思いがあったので、そのまま自主退職ではなく復職という道を選択しました。

さすがに日大側も前回までと同じポジションで復職させるわけにはいかず、日本大学歯学部の職員として異動する形になったわけです。

現在は歯学部の中の学生課で仕事をしています

晴れて自分の潔白が証明され、懲戒解雇を撤回して復職できたのは良かったのですが、当時の事件ほど報道されておらず、世間ではまだ悪者にされているという印象が強いです。

どうか、井上奨さんの現在を多くの人に知ってもらって、悪者のレッテルが剥がれて今後は学生たちが伸び伸びと学べる環境づくりに貢献してもらいたいですね。

加害者選手の宮川泰介さんのその後と現在

宮川泰介さんは1998年2月26日生まれ、東京都出身。

アメフトの名門校・日大豊山高校でアメフトを始め、高校時代から将来は日本のアメフト界を牽引する逸材になると言われていました。

2歳年上のお兄さんも日大のアメフト部だったらしく、エスカレーターで日大(スポーツ科学部)に進学すると、1年生からレギュラーとして活躍。

2016年にはU19で日本代表にも入っていて、まさに日本を代表するような選手でした。

しかし、2018年、悪質タックル事件を起こしてしまいます。
ちなみに、その年も日本代表の話があったのですが、事件により辞退。

記者会見でもアメフトはもうしたくないと引退を示唆していましたが、あのタックルは監督とコーチの指示によるものだったと発言したことにより世間がアメフトの復帰を後押し。

約1年半後に日大アメフト部のQBとして公式戦に復帰を果たすと、大学4年生では副キャプテンとなり、なんとリーグ戦全勝という快挙を達成。

2020年、大学を卒業したら富士通に入社

もちろん、富士通にはアメフトで入っており、今は総務本部に所属。

現在も富士通フロンティアーズの選手としてアメフトを頑張っています。

この富士通フロンティアーズというのは日本のアメフトでも最も強いチームと言われており、日本代表に入るメンバーにこのチームから多くのメンバーが選ばれます。

公式戦でも何連覇もしていて、まさに敵なし。

そんな中で、宮川泰介選手はDL(ディフェンスライン)のポジションで登録されており、公式戦の出場も果たしています。

相当な実力があるということが分かりますね。

事件の加害者でありながら、世間に擁護され、見事に復帰を果たした宮川泰介選手。

悪質タックルの指示は監督やコーチの指導の齟齬から生じた事件でしたが、1年半もアメフトから離れた生活を送っていたものの、日本のアメフト界に必要な実力を持っているので、今後も富士通での活躍に期待したいですね。

日大アメフト部のその後と現在

日大アメフト部は、悪質タックル事件のあとは下位のBIG8リーグ(2部リーグ)に降格。

監督は内田正人さんから橋詰功新監督にバトンタッチされ、再建をはかります。

橋詰功監督は、立命館大学出身。
大学時代はアメフトの本場・アメリカの中でも強豪として知られるオクラホマ大学に留学経験もあり、引退後は監督・コーチとしても実績の多い一流の指導者です。

BIG8リーグに降格した日大フェニックスですが、当然のように全勝し、1年で1部リーグであるTOP8リーグに昇格

昇格した2020年シーズンはなんと、リーグ優勝を飾っています。

2018年、不祥事

→2019年、2部降格も全勝優勝で1部昇格

→2020年、1部を全勝優勝

となっており、日大フェニックスの強さがうかがえますね。向かうところ敵なしといった感じでしょうか。

また、現在は橋爪功監督は契約満了につき、監督を退任したため新監督として平本恵也さんが就任。

平本新監督は、日大出身で後に富士通フロンティアーズに入ったアメフトのエリート。

この日大→富士通は、悪質タックルの宮川泰介選手と同じ経歴となるのも何かの縁を感じますね。

現在も日大フェニックスは大学アメフト界でも最強で、事件の後は新入生も減ると思われましたが、見事に建て直しに成功しています。

以上、日大アメフト部、悪質タックル事件の関係者のその後と現在でした。

監督とコーチの指導が間違った伝わり方をしてしまい、あの事件は起きてしまいましたが、負傷した選手も全治4週間だったものの目立った後遺症は現在も報告されていません。

内田監督と井上コーチが、完全に悪者にされてしまったので、警察の捜査でそれは間違っていたことが判明しているのですが、現在はその新事実を知っている人は少ないと思います。

内田正人さんと井ノ上奨さんの今後の大きな幸せを期待します。